住まいのすごろくマップ

第1ステージ 「住まいを決める」

住み方を決める

家を買うのか借りるのかについてはその時の経済状況と個人の資産に左右されます。かつては借金をしてでも不動産を手に入れたほうが得な時代もありました。現在のようなデフレの状況では何十年もの住宅ローンを組むこともためらわれます。

家に住むためには、いろいろな費用がかかります。分譲マンションを買ったり、一戸建ての注文建築を建設したりする場合、最初に必要な「イニシャルコスト」と、住み始めてから必要な「ランニングコスト」が必要です。

すでに自分の家をお持ちの方には、一度振り返っていただきたいのですが、その住宅の性能と今までに支払った対価のバランスはどのようになっていますでしょうか?

投資目的で取得したのであれば、儲かっているか(利益が出たか)どうかで判断することもできますが、自分が住んでいる家のバランスシートはどうなっているのでしょうか?今のままで満足していますか?

住宅の取得に当たって最初に必要な金額(建設費・購入費=イニシャルコスト)は、その価値があると思って支払うわけです。ところが、実際に住んでみて不満が出てくると、最初に支払った金額に見合う価値が無いということになるかもしれません。高いお金を支払うのですから、本来であれば「快適に住むことができるのが当たり前」にならなければなりません。

  

家を買う

まず、最初に自分が住むための家を取得するというところから見ることにしましょう。

家を取得する場合、一戸建て住宅を注文建築で建設する場合と、新築の建売住宅や分譲マンションを購入する場合、さらに中古のマンションや戸建て住宅を購入する場合とでは大きく異なります。

新築購入

 

簡単な方から説明しますと、「建売住宅」と「分譲マンション」は、ベーシックに必要となる費用として「売り主が決めた販売価格=購入費」が必要です。値引き交渉や、オプションの追加などで多少の増減はありますが、いわゆるイニシャルコストとしての価格は「販売価格」であるといえます。

「売り主が決めた販売価格」とは、その住宅に対するニーズや建物を建てるための原価計算、売り主の利益、近傍類似物件との価格競争などを考慮して決められた価格です。売り主が最も儲かるのは、建物が竣工した段階で全部が完売していることです。不人気で売れ残りが出てしまったり、後から続いて出来た近くのマンションに顧客を奪われてしまったりすることも少なくありません。このようなときは、少しでも早く売り抜けたいと言う思いから、値引き競争や、家具付き販売などに走ります。万が一売れ残ってしまうと、販売を継続していく費用(広告費や人件費、借入金利等)が膨らんでしまい、分譲事業としての利益を圧迫していきます。場合によっては、損が出るが、それ以上の損にならないように売り切ることを目指します。

そのような売れ残り住宅を買う人は、当初の販売予定価格よりも安く買えたり、モデルルームで使用されていた家具を無償で手に入れたりすることができますが、値引きされる前に買った人たちは、その分を取り戻すことは困難です。→(判例あり)

販売予定価格に加えて、契約に必要な印紙代や登記費用などの付帯費用、新しい家に引っ越すための費用、家具やカーテンなどを新調する費用などが次々とかかりますので、例え3000万円のマンションを買ったとしても、とてもそれでは足りません。これに加えて住宅ローンがのしかかります。

注文建築

 

一方、注文建築の場合、最初から土地が自分のもの(たとえば親から相続したなど)であれば、イニシャルコストとしては、住宅の設計費、建設費が中心となります。土地を新たに購入するのであれば、当然土地取得費も必要です。ここでご留意いただきたいのは、注文建築というのは、いわゆるフリープランですから、その住宅の価格(設計費、建設費をいいます。)がいくらになるのか、全くわからないということです。カタログの中のいくつかのサンプルから選ぶのであれば、おおよその価格は示されているかもしれませんが、近くの大工さんや、工務店にこういう家を建てたいと相談するところから始めるとすれば、予算がどのくらいでということから、面積や構造、仕様を決めていくことになります。

このほか、法律上の制約がありますから、どんなに広く建てようと思っても面積に限界があったり、高さ制限や日影規制、眺望その他周囲の状況など制約から建物の高さを規制されるかもしれません。

また、地盤の弱いところであれば、その補強をしなければならないこともありますし、建物そのものの重量が地盤に影響してしまうこと(たとえば木造平屋一戸建てとコンクリート造の3階建てのものであれば、当然建物の重量が異なりますので、それを支えるための構造計算、地盤改良などが必要になります。)もあります。

もう一つのやり方は、とにかく自分が希望する住宅を描いてもらって、それでいくらかを試算してもらいます。自分が考えている資金計画に収まっているのか、少々資金を金融機関から借りいればできるのか、それとも、どこかで妥協しなければならないのかを判断します。

注文住宅の場合であっても、建売住宅や分譲マンションの購入と同じように付帯的に費用が発生します。近くで建設している場合は、職人さんたちに毎日茶菓子を用意するようになるかもしれません。一定の負担も増えますが、自分の家ができあがっていくのを目の前で確認できますし、職人さんたちと毎日顔を合わせていれば信頼関係も築けます。この人のためであれば、最高の仕事をしようとがんばってくれるでしょう。逆にまったく建てている現場にいかなければ、どのような仕事をされているかもわかりません。場合によっては手抜きをされてしまうかもしれませんし、それであれば建売住宅を買うのと一緒です。

茶菓子でなくとも、ほんのちょっとした心遣いがお互いに通じることで、よりよい住宅ができあがります。昔であれば、当たり前の光景でしたが、最近は技術や工法の進歩、多能工でも建設できる合理的な仕様など、見た目では完成度が高い住宅ができるようになりましたが、職人気質の「心の入った」床柱などは、なかなか見られなくなり寂しい気もします。

日本の木造建築の伝統は、いつまでも引き継がれてほしいものです。

戸建新築の総支払額割合 マンション分譲新築の総支払額割合

中古購入

 

次に中古のマンションや戸建て住宅を買う場合です。

基本的には、新築のマンションや建売住宅を買うのと同じですが、新築の場合は、まだ住宅ができあがる前の、いわゆるカタログ販売が多いですからパンフレットの情報で判断しなければなりませんが、中古住宅の場合は、既にできあがっており、周辺の状況(利便性、町並み、コミュニティなど)もわかりやすいので、まさに実物を見て判断することが出来ます。

このときに、気をつけていただきたいのが、その家は、本当に「芯(心)の入っている家」なのか、「張りぼての家」なのかをどうやって判断するのかという点です。

まず、中古で買おうとしている家の図面はちゃんと保管されているか、仕様や工法が適切で建設されたものか、その後の維持管理はきちんと行われていたのか、売り主はきちんとした人か、瑕疵はないか、土地や建物が不自然な担保として提供されていないかなどというようなことです。

戸建中古の総支払額割合 マンション分譲中古の総支払額割合
  

家を借りる

さて、次は家を借りるときの費用です。

家を借りるために必要となる主な費用は、毎月の家賃や共益費はすぐに思いつきますが、最初に必要となるのは、不動産業者に契約を委託した場合の仲介手数料、敷金(毎月の家賃の○か月分など)があります。この敷金は、地域や用途、その性質によって、保証金と呼ばれたり権利金と呼ばれたりします。

このほかに、契約を更新するときに更新料を払う場合や、礼金、敷引きなど、いろいろなケースがあります。

また、家賃を滞納したり、借りる人の身元を保証するための保証人(連帯保証人・身元保証人)が必要となりますが、最近はなかなか保証を引き受けてくれる人がいなくなってきたので、一定の金額を保証会社に支払うことで保証人の代わりとなってくれる制度(機関保証制度)が一般的になってきました。

もともと、敷金は、家賃を滞納したり、退去時の原状回復(退去するときに借りたときとほぼ同様の状態にまで元(きれい)どおりにすることを保証するためのものでしたが、最近は、敷引きや更新料、礼金を徴収するのが不当であるとして裁判となっている例も見られます。

家を貸すときに必要な資金とはなんでしょう?

たとえば、転勤した場合、今まで住んでいた家を貸そうとします。知人や親戚に貸すのであれば、ある程度なあなあの条件で貸すでしょうし、多少元の部屋が汚れたままでも大丈夫かもしれません。しかし、第三者に貸す場合は、きちんとした契約に基づいて貸さないとトラブルになります。たとえば、貸した相手が勝手に壁に穴を開けたり、安物の壁紙をはってしまったらどうでしょう。さらに、家賃を滞納したり、契約していない人が出入りするようになってしまったら大変です。このような損害を受けないように、信用できる相手にきちんとした賃貸契約を締結して貸すようにしなければなりません。それを私たち個人だけの力で解決するのはなかなか困難です。そこで専門の仲介業者などを通じて貸すことでリスクを少なくすることが考えられます。もちろん、その仲介業者に支払う手数料は必要です。

賃貸に定住した場合の総支払額割合 賃貸を移動した場合の総支払額割合
  

将来的にどちらが得か?

分譲マンションのセールストークの一つに「毎月アパートの家賃を支払うのなら、同じぐらいの金額でマンションを買うことができます。」というようなものがあります。

分譲マンションも、アパートもピンキリですから、「家賃=住宅ローン」にはならないことはわかりますが、果たして本当に家賃を支払っているのと同じぐらいの負担で家を持つことができるのでしょうか?

毎月の家賃は払ってしまえばそれで消えてしまいますが、住宅ローンなら、払った後に家が残ります。もし、本当にイコールであるのなら、マイホームが持てる方がよほどいいということになります。

しかし、ここでもう一度よく考えてください。

確かに一見すると「家賃」は、毎月返済する「住宅ローン」と同じように感じます。アパートで支払う「共益費」は、分譲マンションの「一般管理費」、駐車場使用料やいわゆる光熱費、水道代、ガス代などはどちらもおなじようにかかりますので、「ああ、ほとんど同じなんだなぁ。それなら借りるのではなく買っちゃおうか!」と考えることができます。ところが、ここまでは同じように見えますが、一つ大きなものが抜けています。それは、分譲マンションを維持していくための「修繕積立金」、不動産を所有するために必要な固定資産税や都市計画税、そしてなんと言っても一番の違いは、その住宅を管理する「義務と責任がある」ということです。アパートを管理するのは大家さんや不動産屋の仕事。分譲マンションを管理するのは、「管理会社」と言いたいところですが、管理会社はあくまで委託を受けて日常の管理をしているだけで、本質的な建物の管理の責任は、そのマンションを買った私たちにあるのです。

1月当たりの支払額の推移
支払額の累積推移
住宅資産利用の試算例(先のデータは以下に従う) 単位:万円