住まいのすごろくマップ

第1ステージ 「住まいを決める」

住む場所を決める

生活の基盤であるマイホームは「不動産」です。つまり、建物は土地の上に建っていて不動であり、安全・安心・快適な暮らしのためには、土地と建物をセットで考えなければなりません。どのような場所に住むか土地選びをする際には、通勤や買い物のしやすさ、周りにある施設やコミュニティの状況、災害の起こりにくさなど、さまざまな観点があります。どのような土地がよいかという価値基準は十人十色ですが、いろいろな判断要素を知った上で選択をすることが、あなたの納得につながるでしょう。

どこに住むか?

私たちが住むところを決めるための判断要素はなんでしょうか?

個性的な生活を求められる方は「ここに住みたい」という具体的イメージができていると思います。

しかし、ピンポイントで住む場所が決められない場合は、通勤や通学、買い物に便利、病院や運動場、公園・図書館などが近くにある、騒音や悪臭を発生させるものが近くにない、郊外で海や山に近く、自然環境に恵まれているところがいい、先祖代々の土地から離れたくないなどという動機と立地条件で決めていくことになるでしょう。

さらに、暖かい地域、雪が積もる地域、湿度の高い地域、乾燥する地域、海や川、沼などに近い地域、風が強い地域など、その地域に適するように、人は服装を選び、栄養を取り、体調を管理します。建築物も同様に、断熱性や気密性、遮音性などのほか、換気や塩害などにも対策を施さなければなりません。雨の多い地域では鉄部がさびやすく、漏水が起こるかもしれません。逆に炎天下が続くような地域では、部材がひび割れしたり、もろくなったりもします。最初に示した通勤や買い物の便利さなどは「利便性」という立地条件、二番目に示した騒音や悪臭などは「相隣環境」、三番目の海や山に近い、暖かい、雪が積もるなどは「自然環境」という立地条件です。

自分がお気に入りの住宅を建設するとして、たとえ同じ設計であっても、上記のように立地条件が異なると、できあがる住宅には違いが出てきます。なにが違うのでしょうか?また、プレハブメーカーが型番を決め、工場で統一されたパーツを作って組み立てられる住宅(いわゆるプレハブ住宅)であれば、日本全国どこに行っても同じ仕様で出来るはずだ。違いはないのではないか?と思われるかもしれません。

では、なにが違ってくるのかを概観してみるようにしましょう。

「利便性」を重視する

 

利便性が違うということは、まずは「土地の値段」が大きく違います。住むのに便利な場所であれば、誰しもが住みたいと思うでしょう。供給よりも需要が多ければ土地の値段は上がります。逆に利便性は犠牲にしてもいいということであれば、安い土地を見つけられるかもしれません。

つまり、まず第一に「どこの町に住みたいか?」ということ、そしてその町のどのような「地理的位置」に住みたいのか?ということを決めることになります。

実は、この「どこに住む」というところに隠されている大きな視点があります。

例えば、その町の将来的な都市計画、決めたい場所の用途地域や建ぺい率、容積率、高さ制限などの法令による制限です。それと、その土地周辺の実際の利用状況やコミュニティです。

どんなにすばらしい住宅を建てたとしても、住みたい町としての魅力が無くなってしまっては悲しい結末を迎えざるを得ません。例え我が家一件だけで頑張ってみたとしても、近くの商店街は次々撤退し、周りの住宅もみんな引っ越してしまっては、いつまで生活を続けていけるのか、その住宅を引き継ぎたいと思ってくれる人が現れるのでしょうか?

昔は駅前が栄えていたけれど、郊外に大規模ショッピングセンターが出来、また病院なども少し離れたところに移転した。駅前は空洞化してしまい、日常生活も不便を感じるということもあるでしょう。車がないと何もできなくなります。しかし、旧市街は道が狭く駐車場も確保できない。また、年をとって今から車を運転するのも不安だということになると住み続けるのは難しくなるかもしれません。

それとは逆に、駅前が再開発されて魅力のある町に再生されたとか、新駅が出来、空き地に大型店舗が次々とオープンして住みやすくなったというようなこともあるでしょう。その町の中長期的な都市計画は、私たちの生活そのものにプラスもマイナスも与えることとなります。

また、町が発展しすぎて、これ以上住宅を増やせないため、建ぺい率や容積率がいままでより厳しく規制されることもあります。そうすると、現在建っている家を建て替えることが出来なくなりますし、売ろうと思っても売れないかもしれません。

「売ろうと思っても売れない」ということは、壊して建て替えようと思っても、現状より小さな家しか建てることが出来ないから、住宅用地としての土地の価値が下がったということになります。どれだけ修繕で厚化粧してごまかそうとしても、元の住宅の品質に魅力が無ければ買い手が現れることは期待できません。

しかし、壊すのはもったいないぐらい「品質のいい家」が残されていたらどうでしょう?それであれば十分買い手は期待できますし、本論のキーワードとなる「持続性」、「循環」、「住み継ぎ」を満たしているといえます。つまり、高い土地代と建設費を支払い、大切に使ってきた「私の住宅」は、とても高い価値があると言えるのです。

「相隣環境」を重視する

 

乗降客が多い駅の近くなど、利便性が高い場所には、深夜まで営業している商店や飲食店があることが少なくありません。自分がこれらを利用する場合には便利ですが、寝ようとした時に騒音が気になることもあるでしょう。あるいは幹線道路の近くは自動車を利用して移動するには便利な場所ですが、大型自動車の騒音、振動、ばいじんが気になるかも知れません。逆に、隣によく手入れされた庭園があれば、美しい景色を楽しむことができます。

このように、周りにある施設から悪い影響やよい効果を受けるかどうかを「相隣環境(そうりんかんきょう)」と呼びます。この相隣環境も、その町の将来の都市計画によって決まってくるのです。

たとえば、今は閑静で日当たりがよい住宅でも、将来、南側に大きなショッピングセンターができれば、騒音が気になったり、日当たりが悪くなったりするかもしれません。都市計画では、場所ごとに、建てられる施設の種類や、建物の高さの上限、周りに落としてよい日影の上限などが決められています。

ある大きな湖の湖畔に大手デベロッパーの開発で大型分譲マンションが建設されました。南側の窓には湖が広がり、眺望、住宅のグレード、面積、設備もよく、値段も割安でした。駅からも近く、買い物も便利という立地条件ですし、ちょうどマンション販売が好調な時期でしたので、すぐにでも完売するだろうと思われました。

しかし、このマンションは、10年経っても売れない売れ残り住戸が多数出てしまいました。値段を下げても売れません。また、せっかく買ったのに引っ越してしまう人まで出てきました。

どうやらその原因は、その湖に季節的に発生するアオコ(青粉)のせいで、強烈な匂いに我慢できない(窓を開けられない)ということがわかったのです。それだけが原因ではないかもしれませんが、地元の人は、そのアオコのことをよく知っていたのでそのマンションを買うことはありませんでした。

よく知らない土地の物件を探す場合は、その土地の春夏秋冬を知らないと大変なことになるかもしれません。現場を見に行くときは、土日だけでなく、平日の昼や夜はどうか、梅雨の時期や冬はどうかなど、本当であればお見合い期間を十分に確保して選ぶ方が成功すると思われます。今住んでいる土地の近くやよく利用する鉄道の沿線などであれば、土地勘もあり、現地の概ねの想像もできますが、全く違うところで土地を探すときは、十分な下調べや聞き込みが必要となります。特に以下のような調査が望まれますので、宅地建物取引主任者に重要事項説明を求めるなど、確認することを強くお勧めいたします。

事前に調査しておきたいこと
  • 隣近所にはどのような人が住んでいるのか?(騒音やコミュニティ面)
  • 周辺からの悪臭・ばい煙・振動・騒音がないか?
  • 日照など将来も問題はないか?
  • 浸水、土砂崩れなど災害の履歴はないか?
  • 地盤は軟弱で対策が必要か?

詳しくは下記の参考ホームページをご覧ください。

郊外に住む(注意事項)

「自然環境」を重視する

 

住宅は、過酷な自然環境(風雨、雪、炎熱等)や災害(台風、地震等)から私たちを守らなければならないという最大の使命があります。これらの自然環境は日本のどこでも何らかの影響があります。

少し違う例で示しますと、例えば「自動車」です。北海道で必要とされる自動車と、沖縄で必要とされる自動車。同じメーカーで同じ車種であれば同じなのか?北海道仕様の車を沖縄で使えるのか?その逆はどうか?

もちろん、季節によってはどちらも支障なく使えるかもしれません。しかし、極寒の環境に耐えられる車と、灼熱の環境に耐えられる車は同じであるはずがありません。皆さんも「寒冷地仕様」などの文字を見られたことがあると思います。

住宅も同じように「寒冷地で耐えられる住宅」と「炎天下で耐えられる住宅」は当然に違ってきます。ガラス一枚を例にとってみても、一方では寒さに強いガラス、一方では暑さに強いガラスである必要があります。何も考えずに東京と同じつもりでガラスに断熱用の遮光フィルムを貼り付けたら、室外側の温度と室内側の温度の差に耐えきれずガラスが割れてしまったこともあります。

このように地域差があると、私たちが希望する住宅と「同じ間取りの設計」はできますが、その地その地に適した資材や工法によって適切に建設しなければ、「私たちが住み続けられることが出来る住宅」にはなりません。一見同じように見えても、実は全く違う住宅であると言うことができます。

ですから、その地域に適した住宅を造らない限り、「持続性」も「循環」も「住み継ぎ」も出来ない不良資産を抱え込むこととなるのです。

次に、災害に対する安全性について考えると、まず地盤に対する注意点が挙げられます。建物は戸建住宅でも数十トンもの重さがあります。風や地震では自重に加えてさらに力がかかります。建物をしっかりと支えるには、地盤にあった基礎形式を選ぶ必要があります。良い地盤では独立基礎布基礎(連続基礎)、やや軟弱であればべた基礎、かなり軟弱であれば杭基礎を選ぶといった具合です。

もともと池や沼、田んぼだったところを埋め立てて造った地盤は非常に軟弱で、安易に布基礎で家を建てると、時間とともに地盤沈下で家が傾くといった被害が起こります。かつてその土地がどのようなところであったかは、古地図を調べるとわかることがあります。

また、丘陵地でひな壇状に作られた宅地をよく目にしますが、このような造成地では、地山を切って平らにしたところと、切った土を斜面に盛って平らにしたところでは地盤の耐力が大きく異なります。何も考えず家を建てると、ゆるい地盤側が沈下し、家が傾いたり、基礎が折れたりといった被害が発生します。ですから、地盤調査を行って適切な基礎形式を選んで家を建てる必要があるわけです。

軟弱な地盤は建物の沈下・傾斜を発生させることがあるだけではなく、地震の際に揺れを増幅したり、液状化被害を起こしたりする問題もありますので、とくに注意が必要です。

そのほか、崖や急斜面の近くでは集中豪雨や地震によって土砂崩れや擁壁の倒壊が起こる危険もあります。また、周囲よりも低くなっている土地も要注意です。このような土地では大雨の際に浸水の恐れがあり、地下室を造るのは大変危険です。そして、普段からじめじめと湿気が高いことも多く、健康上の心配もあります。

以上、住む場所を選ぶことは、地域に適した住宅をどのように造るのかに関わっており、そして自分や家族の命を守ることにも深く関わっていることがわかるでしょう。