住まいのすごろくマップ

第4ステージ 「新たな住まいへ」

愛着のある住まいを次の世代へ受け継ぐ、または第三者へ売却する時がいずれ訪れます。また最近で は、都会から地方へ移住し、新たな土地・住まいで新たな生活を始める人も徐々に増えています。 このように、「住宅」は長寿命の資産であるため、次の住み手への引き継ぎ方を考えておく必要があり ます。さらに、ライフスタイルの多様化に伴い、新たな土地・住まいへ移る機会も増えてくることを想 定して、住まいの選び方を知っておくことも大切でしょう。

新たな住み手に渡す?

さて、皆さんの配慮や行動により育まれた愛着ある住まいは、次の世代に引き継がれることで、真の意味でサステナブル住宅と言えることになります。いちばん自然なのは、皆さんの子どもがその家を住み継いでいくことだと思います。住み継ぐ際に、次に使う子どもの家族が、ご自身の暮らしに合わせた改修を適切に施すことで、ハードおよびソフト両面の性能が向上することになります。皆さんの子どもも、自分が育った住まいですから、それからも愛着を持って住まいと向き合っていくでしょう。

もし子どもが住み継がない場合は、第三者がその住まいを住み継ぐことになります。これまでにも触れましたが、現在の不動産市場では、一定年数を経過した住宅の建物は価値が無いものとされてしまうため、売却する際に建物から利益が出ることはほとんどありません。けれども、長く使われるような性能と、住まいの生い立ちからこれまでの履歴を備えて大事に使われてきた住宅は、次に使いたいと思う人が現れる可能性が高くなるはずです。

長年愛着を持って暮らしてきた皆さんの住まいが、子どもや第三者の新たな住まいとなって誰かの役に立ち続けることは、皆さんにとっても本望なのではないでしょうか。

しかし、いくらサステナブル住宅といえども、人間と同じように終末が訪れる時が来るでしょう。住まいだけでなく、建物は使うことにより、人の役に立つことで存在する価値を発揮します。何代にもわたり住み継がれ、大事に使い続けられても、住まい手の安全を担保できなくなったり、性能を維持するための改修費用が大幅に上昇するようになる時が来るでしょう。文化遺産でもない限り、そのようなときは残念ですが解体することになります。なお、その場合、古民家については、木材や建具に市場での 価値があることがありますので、それらを仲介する業者に売却することも考えられます。

また、住まいはまだまだ使い続けられるのだけれども、過疎化が進み、その地域での生活が困難になるため、結果として住まいが使われなくなることもあるかもしれません。現在でも日本のいたるところでそのような状況が進行しています。これから高齢化がますます進み、人口が減少していくことを考えると、地域によっては残念ながらサステナブル住宅は難しいと言わざるを得ないでしょう。

これらのことをご理解の上、本稿をご覧いただいた皆さんには、是非ともご自身の住まいを愛着ある住まいへと育み、また、手放す際にその住まいが住み継がれる「サステナブル住宅」となるようにしていただきたいと思います。皆さんの普段の暮らし方、住まいへの向き合い方はサステナブル住宅へと近づけているのか、時々振り返っていただき、サステナブル住宅のゴールを目指して欲しいと思います。

地方へ移住する

地方への移住を希望する人が増えています。定年後に地方でのんびり暮らしたいと考える中高年の方 や、自分に合った働き方・暮らし方を地方で実現したいと考える若者など、その目的は様々です。それ では、「移住」を考えるときに、住まいについてどのようなことを知っておけば良いのでしょうか。

移住先を決める

 

地方と一言で言っても、全国津々浦々様々な地域があります。まずは、移住先でどのような暮らしを したいか、イメージしてみましょう。近年では、全国各地の移住情報をワンストップで得られるポータ ルサイト(例えば、「JOIN ニッポン移住・交流ナビ」)な ども充実しています。また一方で、移住先での生活で大変なことも事前に想定しておくことも大切です。 例えば、雪の多い地域では雪掻きなどの重労働が必要だったり、田舎では地域行事の回数が多かったり と、思いもよらないこともあります。自分がその土地で暮らした時の良い面、悪い面を具体的にイメー ジし、年齢を重ねても住み続けられる環境かどうか、予め考えておくとよいでしょう。

また、人口減少対策として、移住者を支援する制度を設けている自治体も多数あります。移住者へ住 宅を安価に貸し出す制度や、就農や起業を補助する制度、子育てを支援する制度など、支援の対象は暮らしや仕事の様々な面に広がっています。制度の内容は自治体によって異なるので、まずは移住候補地 の情報を集めてみましょう。

住まいとなる物件を探す

 

地方で住まいを探すとき、借りる、中古物件を買う、空き家を改修するなど選択肢がいくつかありま す。中古物件や空き家を探すときには、自治体等が運営する「空き家バンク」を活用すると、条件に合う物件を見つけやすいでしょう。

また、物件情報だけでなく、周辺施設についても情報収集しておきましょう。日常的に利用するスー パーや交通機関、病院や子育て関連施設、さらに高齢になった時に必要となる介護関連施設など。今の 生活や将来の生活で必要となる施設に行きやすいかということは、物件と同じくらい重要なポイントです。

地方での仕事・二地域居住

 

地方への移住を考えるとき、大きな問題は働き口の確保ではないでしょうか。しかし現在では、田舎 の環境を活かした就農、ICT 環境を整えたテレワーク、新規事業による起業など、地方だからこそできる 働き方を求め、挑戦する人が増えています。さらに、同じような価値観をもつ人たちがつながり、移住 を促進する活動も展開されています(「○○移住計画」など)。

一方で、完全に地方へ移住するのではなく、都市と地方を行き来しながら生活する「二地域居住」と いうスタイルも定着しつつあります。平日は都会で働き、週末は田舎で余暇を過ごす。都会と田舎の両 方の良さを享受できます。これは交通網が十分に発達したことと、空き家を安価に手に入れやすくなっ たことが功を奏した、新たなライフスタイルとも言えるでしょう。

例えば、東京と千葉県南房総で二地域居住を実践している家族の住まい探しの苦労や田舎暮らしの体 験談がまとめられた書籍(馬場未織:『週末は田舎暮らし---ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記』 ダイヤモンド社)なども出ています。興味のある方は、参考にしてみてはいかがでしょう。

幸せな「住生活継続計画」を実現させるには

皆さんはこれまでのすごろくをたどっていただき、それぞれ幸せな住生活継続シナリオを完成させることができたでしょうか? 住まいを手に入れるとき、住まいを使うとき、住まいと別れを告げるとき、それぞれのときに、私たち自身が少しだけ手間を掛け、行動すると有益なポイントがご確認いただけたことと思います。

幸せな「住生活継続計画」を実現させるには、住まいというハコの性能といった「ハード面」だけでなく、住まいの使い方や地域とのかかわりといった「ソフト面」、そして「中長期的な計画性」がどれも重要であることが実感できたのではないでしょうか。つまり、住まいというハコの性能はもちろん重要なのですが、それ以上に住まいや地域に対する住まい手の向き合い方がより重要です。住まいや地域に対する向き合い方の上手な住まい手(皆さん)に大事に使い続けられることによって、住宅というハコは、誰からも大事にされる、愛着ある住まいへと育まれていくのです。それは、住み手に高い満足と資産価値をもたらすだけでなく、よりよい地域を育む鍵となるものです。

このすごろくを体験してこれらのことをご実感いただいた皆さんには、ご自身の住まいを愛着ある住まいへと育み、また、手放す際にその住まいが住み継がれる「サステナブル住宅」となるように、取り組んでいただければ幸いです。皆さんの普段の暮らし方、住まいへの向き合い方がサステナブル住宅へと近づいているのか、このすごろくを活用して折々に振り返っていただくことで、無理なくサステナブル住宅のゴールを目指しませんか?