住まいのすごろくマップ

第1ステージ 「住まいを決める」

新築か中古か

次の大きな分岐点として、新築にするか、中古を買うかという分かれ道があります。自動車などの製品を考えると、中古を購入するという選択肢はお金だけの問題で、お金が許すなら当然古いよりも新しい方が良いと思うでしょう。しかし、住宅の場合は少し事情が違ってきます。住宅の価格を考えると中古の方が安いことに加えて、中古は新築の場合のリスクを軽減できる点もあり、一概に新築の方がいいとはいえません。下表に新築と中古のメリット・デメリットを整理してみます。

新築 中古
メリット
  • 建物が新しい
  • 最新の構造技術で建てられる
  • 最新の設備が入っている
  • 中古に比べて長く住める
  • コミュニティを初めから形成できる
  • 新築に比べて価格が安い
  • 実物(建物や街並みなど)を見て選ぶことができる
  • 管理・コミュニティの状況が確認できる
デメリット
  • 建売住宅を除けば、現物を見ないで契約しなければならない
  • 契約してから住むまでに時間がかかる
  • 建物が古い
  • 耐震性能が十分でない場合がある
  • 設備性能が新築に比べて劣る
  • 新築に比べ改修や建替までの期間が短い

新築住宅のメリットは、何といっても新しいことです。構造や設備の技術革新は常に進んでいますので、新築住宅では最新の技術や設備が整えられ、そこに気持ちよく住むことができます。そして、中古に比べると長く住むことができます。また、マンションや大規模開発が行われた建売住宅では、住み始めるタイミングが多くの世帯で同じなので、コミュニティを初めから一緒につくることができます。

逆に、新築住宅のデメリットには、建売住宅など既に完成している物件を買う場合を除いて、目の前に何もない状態で買う決断をするということがあります。マンションのモデルルームはあくまで見本です。モデルルームと同じタイプの部屋を買ったのに、実際には違っている、などという後悔はいくらでもあります。また、モデルルームも存在していない場合は、図面だけで想像しなければなりません。さらに恐ろしいことに、図面どおりに建物ができあがっていない場合もあります。

例えば、全戸同じタイプの設計であるマンションを例にとりましょう。間取りは当然モデルルームも同じはずですから、概ねの検討をつけることはできます。しかし、実際に買って住む家は、完成したマンション内の住戸をモデルルームにしている場合を除いて本当に同じかどうかわかりません。例えばモデルルームで見ていたときよりも室内側に張り出している「柱」や「梁」が太く、部屋が狭くなっていることなどが起こります。

また、モデルルームは見学者の気を引くように高級な設備を設置していることも少なくありません。これらはオプションと呼ばれるもので、その通りにしようと思ったら、販売価格にどんどん加算されていく費用です。さらに、モデルルームにおいてある家具は、私たちが使っているものと同じように見えても、ワンサイズ小さなものが展示されていることもあります。例えばベッドですが、ワンサイズ小さなベッドが置いてあれば、その分、部屋が広く見えるようになります。さらにモデルルームはシンプルな家具を数点置いているだけですから、実際の生活道具を持ち込むと、広く見えていた部屋はとたんに狭くなってしまいます。あとで後悔することも多々ありますので、図面とモデルルームの寸法をよく確認し、必要があればメジャーを持ち込み、販売員の説明をよく聞くということが重要です。

中古住宅を買うときのメリットは、コストが新築に比べて安いこともありますが、既にできあがった建物を見ることができ、周辺の状況(利便性、町並み、コミュニティなど)もわかりやすいので、まさに実物を見て判断することができることです。

特にマンションの場合は、管理の状況をチェックできることが大きなメリットとなります。管理は、戸建てであれば一人で何とかなる(しなければならない)事項ですが、マンションの場合は、一人ではなく、区分所有者全員で行われています。この管理のやり方はマンションごとに異なっていて、住宅購入後に住民が集まってみないと、きちんと管理ができていくかは分かりません。例えば、将来マンションで発生する不具合を直していくために修繕積立金を集めますが、全員から納付されなかったり、適正に使用されなかったりすると、大規模修繕工事など本当に必要なときにお金が足りず、各住民に急な費用負担が発生することになります。中古マンションではこれらもチェックすることができます。

中古戸建て住宅を購入する際の留意点
  • 図面の有無
  • 建築確認、検査済証の有無
  • リフォームの経歴の有無 およびその際の内容や図面等の記録
  • 建て替えが可能かどうか(同じ規模の住宅を再建築可能かどうか)
中古マンションを購入する際の留意点
  • 管理費や修繕積立金等の納付率は健全か
  • 所有者が実際に居住している割合はどの程度か
  • 管理組合の運営はどうか
  • 管理会社が常駐しているか
  • 建物図面(現状を反映している正しいもの)は保管しているか
  • リフォームに関する明確な規約は定まっているか
  • 長期修繕計画や修繕履歴はあるか
  • 競売住戸はないか
  • 大規模修繕や建替えは何年ほど先のことになりそうか
  • 耐震性能はどの程度か

中古住宅を選択する場合、そのメリットとして価格が安いことがありましたが、その浮いたお金をリフォームに廻すこともでき、リフォームすることで中古の古いというデメリットが大きく改善されます。リフォームについては、次の章で改めて述べますが、中古物件では、よくリフォーム済と書かれていることがあります。ここで重要なのが、その家は本当に「芯(心)の入っている家」なのか、張りぼての家」なのかの判断です。リフォーム済の住宅は、表面上は新築のようにきれいになっているので、見ただけでは簡単に判断できません。

ではどのように判断したらよいでしょうか。まず、中古で買おうとしている家のリフォーム前後の図面がともにちゃんと保管されているか、最初に適切な仕様や工法で建設されたものか、建築後の維持管理はきちんと行われていたのか、売り主はきちんとした人か、瑕疵(欠陥)はないか、土地や建物が不自然な担保として提供されていないかの確認が必要です。

中古で欲しい住まいを手にいれる

中古住宅には、新築にはない価値があります。メリットは、住まいの選択肢が増えることです。例えば、新築では手の届かない利便性が高い立地や広い間取りの住宅や、古くて味わいのある住宅が手に入ります。そして、購入価格は新築よりも安く、たとえば余った予算でリノベーションして自分の好みの空間にすることも可能です。

このように、ありきたりではない、それぞれのライフスタイルに合致する住宅を手に入れられたなら、きっと豊かな生活が実現できるでしょう。どのまちに住みたいか、どんな暮らしがしたいか。住まいを選ぶことは、自らの生活をデザインすることでもあるのです。中古住宅は、そのような生活のデザインを楽しむための近道のひとつです。

また、住宅は社会全体で共有している資産です。新しく住宅や住宅地を開発するには多大なエネルギーを要します。中古住宅の活用は、まちの資産の活用でもあるので、社会的に大きな意義があるのです。 このため、国や地方自治体によって、より安心して中古住宅を活用できる仕組みづくりが進められています。

空き家を購入・活用したい

空き家を購入・活用する場合には、耐震補強や、空き家であった期間が長い場合には老朽化した設備の更新など、思わぬところで出費がかさむことがあるかもしれませんので、住宅診断を依頼するなど、事前にしっかり状況を確認しましょう。このとき、空き家活用には各自治体で補助制度があることが多いですので、そういった費用の一部は、条件が合えば制度を活用してカバーできる場合があります。選択肢の一つとして活用を考えてみましょう。購入する物件のある自治体の補助制度の情報を収集し、うまく活用しましょう。

リノベーションしてみませんか?

最近よく耳にする「リノベーション」という言葉は、既存の建物を快適な現代的暮らしを実現する住まいに再生することをいいます。主に建物の修繕を意味する「リフォーム」とは意味が異なり、中古住宅に大規模な改修を行うことで、建物の新築時の状態よりも、性能や機能、価値を高めることを指します。また「コンバージョン」という似た言葉も有りますが、これはオフィスビルを住宅用に改修するなど用途や機能の変更を伴うリノベーションを指します。

現在、国内に既に建築されている住宅は多くあり、空き家も社会問題になっています。このような「住宅ストック」と呼ばれる多くの既存の建物を長期に渡り有効に活用するために、地域での暮らしをトータルで捉えたうえでのリノベーションやコンバージョンが注目されています。

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