住まいのすごろくマップ

第2ステージ 「住まいを使う」

年を取る

私たちは日々年を取っていきます(高齢化)。また、住宅も日々古くなっていきます(老朽化)。私たちは、人生の中で迎える節目は様々な場面で訪れ、また人によって異なります。しかし、高齢になると多くの人に、一家の働き手が定年を迎える、それまで経営していた店を閉じる、農業や漁業を子どもにバトンタッチするなど、たとえば仕事の第一線を引退するというような、大きな節目が訪れます。

一昔前は、給料は右肩上がりで60歳で定年を迎えてもそれまでには住宅ローンを払い終わり、退職金と年金で老後に備えることができました。しかし、厳しい現在の世の中では、いつリストラされるか、いつ倒産するか、いつ肉体的や精神面で体調を崩すかと不安な時代になりました。また、退職金も十分にもらえない、再就職もできない、年金も65歳まで支給されない、それなのに住宅ローンを80歳まで払い続けなければならないなど、日々の生活を過ごすだけでも予断を許せない状況を迎えています。

さらに、今住んでいる住宅が新築から20年も30年も経過してきますと、あちらことらにガタが来たり設備が使いづらくなってきて、それを維持したり改善しようと思っても多額の費用が必要となってきます。

定年になってから考えればいい、65歳になったときに考えればいいという甘い住生活継続計画では、安心して日常生活を送ることすら困難です。現実をよく考えてみることにしましょう。

このような人生の節目を迎えると、経済状況の変化により今までと同じ家賃を支払っていくのが難しくなったり、子どもが独立して夫婦二人になって掃除や庭の手入れが大変になったり、身体機能が低下してバリアフリーでない住宅では住みにくくなったりと、今までの住宅に住み続けることが困難になることもあります。一方で、住宅で過ごす時間が増えてきます。そこで、このまま現住宅に住み続けるのか、はたまたこれからのニーズにあった新しい住まいへ住み替えをするのか、ここで大きな分岐点が訪れます。

住み続けることのメリット

一つ目は現住宅に住み続けるという選択です。今まで住んできた住宅には愛着があります。また、どこに何をしまってあるのか、どの部屋が夏は涼しく冬は暖かいのか、風呂やトイレはどのように操作したらよいのかなど、住まいの上手な使い方が身に付いています。また、近隣とのコミュニティも大切です。高齢になってから遠くに引っ越すと、それまで培ってきたコミュニティとのつながりが断ち切られ、戸惑うことも少なくありません。私たちは、地域に長く暮らす間に、たとえばどの商店のどの棚に好みの商品があるか、どの喫茶店のどの席に座ると親しい友人と会えるのかといったことまで、自分にしっくりと馴染んだ生活環境を作り上げています。特に高齢になってからは、このような自分に馴染んだ生活環境はたいへん貴重なものです。ですから、住み慣れた住宅に、できれば死ぬまで住み続けたいと考える人は多いと思います。

住み続けるために、住宅について考えること

しかし、高齢期になると誰しも身体的能力が衰え、自分や家族が介護を受ける必要もでてきます。現住宅に住み続けるためには、身体的能力が衰えをハード的にカバーするためのバリアフリー改修(バリアフリー改修については、「つまづいてケガをする」に詳しく述べています)に加え、特に一人で住んでいる場合には、緊急時に外部へ通報できるような設備も重要となってきます。介護サービスの利用などソフトの活用も考えていかなければなりません。

高齢期にこれらの出費が掛かると大変です。このために、要介護認定を受けて介護保険などを活用することも考えられます。あるいは、自宅に住み続けながら資金を得る方法として「リバースモーゲージ」などの制度があります。これは現自宅を担保にして資金を借り、本人死亡時に自宅を処分することで一括返済するというものです。将来にわたって現住宅に住み続けることを望む場合には、あらかじめこれらの制度を活用する準備をしておくことが薦められます。

住み続けるために、地域について考えること

高齢期になって身体的能力が衰えた場合、住宅だけでなく、地域での生活にも不便なことが生じます。特に、それまで買物などの用事を自動車で済ましていた場合や、地域に階段や坂道を多い場合には、高齢になると移動に不便を感じるようになります(買物難民と呼ばれます)。その一方で、特に高齢者だけの家族では、掃除が辛くて自宅の風呂が使えない、調理の手間が大変で食事の用意ができない、といった問題が生じて、商店や食堂など、さらには医院・病院や公衆浴場などを使いたいと思う機会がむしろ増えることが多いのです。

このような問題に個人で対応するのは簡単ではありません。ですから、地方自治体やNPOや企業が提供する様々な支援の仕組みを活用することも有効です。たとえば、商店などの送迎サービス、商品の宅配サービスは、多くの地域で提供されています。また、弁当宅配サービスや、食事を提供するコミュニティカフェなどが利用できる地域もあります。

さらに、このような問題を解決するためには、地域の住民が手を取り合ってゆくことがとても大切です。たとえば、駅からはなれた団地などで高齢化が進むと、通勤客が減ってバスが廃止されることがあります。これに対応するため、自治会が中心になってバスを運行するなど、手を取り合って初めて実現できる事はたくさんあります。

住み替えるという選択

もう一つの選択は、もっと住みやすい住宅への住み替えです。住み替えるかどうかの決定は難しいものですが、特に、急に介護が必要になったときなどに慌ただしく住み替え先を探すのはとても大変で、多大な費用も掛かる事があります。日頃から、介護が必要になったときにどうすれば良いのか、地方公共団体などの講座などで、知識を深めておくことも有益でしょう。住み替えについては、「独り住まいになる」で詳しく述べていますので、ご覧ください。