住まいのすごろくマップ

第2ステージ 「住まいを使う」

大地震が発生する

大地震に対する住宅の防災対策の基本は、2種類に分けられます。

1つは水や食料、トイレなどの備蓄や家具の耐震固定、非常用電源等の準備のような防災対策をすることです。

2つめが、建物そのものに十分な耐震安全性をもたせることです。

これらの両方が合わさって地震から生活基盤を守ることができます。こうした基盤を強化しておくことは、地震後に日常生活をすばやく回復するのに役立ちます。

以下のすごろくは耐震安全性だけをみたものですが、防災対策をするかしないかでも、同じすごろくが描けます。

まず十分な耐震安全性をもっているかどうかについては、新築住宅か、すでに建っている住宅かによって判断が異なります。1981年が建築基準法の変わった年であり、判断の境目になります。現行基準の考え方をみてみましょう。

耐震性能とは

建物が建ってから寿命を迎えるまでに、様々な力や作用が働きます。屋根・壁・床・骨組みなどの自重、建物内にある家具や設備の重さ、それから地震、台風、豪雪などの自然現象によるものもあります。建物の寿命を長くしたければ、建物を使っている間に大きな自然災害に遭遇する確率が高くなりますので、より大きな力に耐えられるようにする必要があります。

耐震性能は、地震に遭遇しても、建物が損傷したりせず、建物内の人や資産を守り、建物が果たすべき機能を提供し続けられる能力ということができます。1981年に改正された建築基準法に基づく構造設計基準(新耐震基準と呼びます)では、二段構えの目標を設定しており、これにより耐震設計がなされています。

  • 頻繁に起こる大きさの地震の揺れに対しては建物の構造に損傷がないようにする
  • 滅多に起こらないが大きな地震の揺れに対しては、致命的な損傷を回避し人命を保護するようにする

一段目は建物の使用中に数度は遭遇するかもしれない数十年に一度の中地震を想定したものです。人命財産とも被害がなく、建物の再使用ができるように、耐力や変形をチェックします。

二段目は、もしかすると建物の使用中に1 回は遭遇するかもしれない、数百年に一度の大地震を想定したものです。数百年に一度の大きな地震の揺れでも無傷でいられるような、非常に頑丈な建物を作るのを義務付けるのは、経済的に合理的ではありません。そこで、この二段階目では、建物は損傷して使えなくなるかもしれないけれども、中にいる人の命は守れるよう、危険な崩壊が起こらないようチェックをするものになっています。

ただし、建築基準法は最低基準を定めていることに注意してください。住宅の施主自身の判断により、耐震安全性をもっと高めることはできるのです。基準法のままにするのか、それとも耐震性能をもっと高めるのか、性能を高めれば価格も高くなりますが、耐震安全性をどのくらいにするのか、考えておくことが大切です。レベルの参考になるものとして品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律:2000年)の耐震等級があります。下記のリンクを参照してください。

新築住宅でできること

揺れで壊れない新築の建物を造るには、大別して次の3 つの方法があります。壁や筋かいで変形せずガッチリと抵抗できる構造を作る「耐震構造」、柔らかく変形能力に優れた積層ゴム支承や滑り支承などで建物を支え、地盤の揺れが建物に伝わりにくくする「免震構造」、ダンパーと呼ばれるエネルギー吸収装置を取り付けたり、能動的に力を発揮できる制御装置を導入したりして振動をコントロールする「制振構造」です。

また、地震の際には地盤の液状化や地滑りなどの地盤災害も起こりえますので、地盤や基礎についても十分な注意を払う必要があります。特に土地は建築士がかかわる前に、すでに建築主が購入していることが普通です。建築主自身が地盤の良し悪しを見分けなければなりません。

以下の日本建築学会サイトは液状化の危険性を学ぶことを中心としたものです。そのほか、良い地盤を選ぶためのコツを学んでおきましょう。

旧耐震基準

一方、旧耐震基準と呼ばれる古い建物はどうでしょうか。旧耐震基準は、1981年以前に設計された建物のための設計基準です。新耐震建物と旧耐震建物の差は、被害程度と被害確率の差に表れています。たとえば1995年の阪神・淡路大震災の被害状況では、旧耐震基準の建物は30%弱が大破以上の被害を受けたのに対して、新耐震基準の建物は数%にとどまっています。

<「建築震災調査委員会:平成7年阪神・淡路大震災 建築震災調査委員会中間報告 中央区の特定の地域を退庁とした悉皆調査の分析(平成7年)」より作成>

既存住宅の耐震診断と耐震改修

旧耐震基準の既存住宅に十分な耐震安全性があるかどうか確認するには、まずは耐震診断を受けることから始まります。健康診断のように建物の現在の耐震性を判断し、補強方針を定めるのが耐震診断の目的です。具体的には既存の建築物の構造強度を調べて、想定される地震に対する耐震性、受ける被害の程度、大きさを判断します。この診断は建築士等の専門家が住宅・建築物の耐震性がどの程度かを調査し、耐震改修工事の必要性があるかどうかを判定します。

耐震診断の結果、倒壊の可能性があると判定された場合は、耐震改修工事を行うことになります。耐震改修工事を行う場合は、建築士等と一緒に耐震改修の計画と設計を行います。

耐震改修のポイント

耐震改修工事は、100~150万円で行われることが最も多くなっています。多くの自治体で助成制度や融資制度がありますので、調べてみるとよいでしょう。

改修工事のポイントについて、詳しくは次の資料等をご覧ください。

出典:財団法人日本建築防災協会

防災対策のポイント

住宅の耐震性を十分に確保するほか、防災対策をとることが住宅に住み続けるために大切です。大地震後も生活をすばやく安定させるためには、次の各項目を準備しておく必要があります。特に1~5については市民の関心が高まっていますが、6、7については1家族だけでできることではなく、住民同士の訓練や話し合いが欠かせません。特に地域コミュニティの衰退と共に、まだまだ準備は十分でない地域が多いのが実状です。命を守り、愛着のある地域を守るために、ご自身・家族が地域に貢献する行動を1日でも早く起こしていくことが望まれます。

  • 家庭における備蓄の充実とその維持:食料や水の備蓄とそれらを循環させるシステム作り
  • けがをしない安全な環境作り:家具の耐震固定、ガラスなどの飛散防止など
  • 避難経路の確保:住宅内で避難をさまたげる物品がないか、火災時にどうするか
  • 生活を維持するために必要な物品の備蓄:非常用電源やライトの用意、乾電池や医薬品の備蓄
  • 家族内での話し合い:連絡方法や帰宅困難時の対処、子どもの引き渡し方法など
  • 救助活動:自分や近隣の人々を救助し、支援の必要な高齢者や身体障害者を支える方法
  • 近隣・町内・地域内での助け合い:安否確認や物資の配布、要援護者の支援等、さまざまな活動が必要です