日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

 重度の体温調節障害を持つ頸髄損傷者(以下頸損者)の至適温度を把握することを目的とした人工気候室実験を行った。実験条件は、室温19, 21 23, 25, 27, 29, 31℃、相対湿度50%、着衣量0.6clo(中間期の着衣の断熱性能に相当)、被験者数は、頸損者17名、学生37名である。1温度条件の曝露時間は90分とし、この中で口腔温(深部体温の代替温度)、皮膚温などを一定のインターバルで測定した。

 図より頸損者の口腔温が標準誤差も含めて平熱範囲内に入る室温は23℃と25℃であったことから、頸損者の至適温度範囲は24±1℃と推定される。着衣量によって至適温度範囲が変化する可能性はあるが、24±1℃が頸損者の室内温熱環境を計画する際の参考資料になるものと考えている。相対湿度の影響については今後の課題である。

三上功生, 青木和夫, 蜂巣浩生, 武田仁:頸髄損傷者の生理的体温調節反応の特徴, 日本建築学会環境系論文集, Vol. 73, No. 633, pp. 1233-1239, 2008