日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

 重度の体温調節障害を持つ頸髄損傷者(以下頸損者)の麻痺の違いによる環境温度への適応の差(違い)について、人工気候室実験のデータをもとに調べた。
 室温21, 23℃における体温の変化量(平均値)を完全麻痺者、不完全麻痺者、学生別にみたものを図1, 2に示す。室温21, 23℃ともに不完全麻痺者は、それほど大きく体温は下がっておらず、学生と同じような変化を示していた。一方、完全麻痺者は大きく体温が下がっていた。明確な理由は不明だが、不完全麻痺者は頸髄が部分的につながっているため、体温を調節する機能が完全麻痺者よりも残存している可能性がある。従って、完全麻痺者の方が熱的に充分な配慮が必要な対象であることが示唆された。

三上功生, 頸髄損傷者の麻痺及び生活習慣の違いによる環境温度への適応の差, 頸損, No. 97, pp. 10-11, 2015