日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

 重度の体温調節障害を持つ頸髄損傷者(以下頸損者)の住宅熱環境に関するアンケート調査(n=338)を行ったところ、冷暖房使用率が低いトイレ、脱衣所に冷暖房設備が必要と感じている頸損者が多かった(図1, 2)。

 頸損者の排便は、浣腸、腹部マッサージ、摘便などを組み合わせて行っているため、1回あたりの排便時間は、図3に示すように極めて長い傾向にある。また、頸損者は筋肉や皮膚の柔軟性、伸縮性の喪失により衣服の着脱に時間がかかる傾向にあるため、脱衣所も使用時の在室時間は長いことが予想される。

 一般的にトイレ、脱衣所は夏季、冬季に暑熱・寒冷空間になりやすい。その中で半裸体または裸体で長時間在室することは、頸損者にとってかなりの熱ストレスとなっているために冷暖房設備の必要性を感じている頸損者が多かったと考えられる。従って、頸損者宅のトイレ、脱衣所は冷暖房を行えることが望ましい。

三上功生, 吉田燦, 青木和夫, 蜂巣浩生:頸髄損傷者の温熱環境に対する意識・実態調査, 日本生気象学会雑誌, Vol. 42, No. 2, pp. 97-107, 2005