日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

動線に沿って設置された照明は,照明自体が動線を示す視覚情報となり,かつ床動線を明確に照らすという2つの重要な役割を果たしている。これを日常的に歩行の手がかりにしているロービジョンは少なくない(図1)。近年このことが認知され,鉄道のプラットホームの照明は,危険なホームの端を示す床面のラインと並行して,ライン状に配置されるようになった。
しかし,2011年の震災後の節電時には,公共空間などにおいても,あまりにも単純に照明が消された。2列に配置された蛍光灯は互い違いに消され,ロービジョンは歩行の手がかりを失った。同じ電力量なら,線状に片側を残して「一本筋を通す」(図2)か,調光して2本のラインを残す方法が望ましい。節電時にも良い照明環境を実現するために,ON-OFF制御を考慮した照明計画を考える必要がある。

図1 ライン状に設置された天井照明は進行方向を示す手がかりとなり,2本の間隔で通路の幅も分かりやすい(クライストチャーチ)

図2 2本のうち一本を残す照明の消し方(良い例)