日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

評価実験では、種々の実験条件下で被験者が与えられたカテゴリ判断表から主観的に選ぶことにより、手話の見やすさの程度(良否)を求めた。得られた手話の見やすさの程度はそのまま、実際の手話の内容が相手に伝わる程度(手話が読みとれる割合)に繋がるとは必ずしも云えない。特に手話が見えにくい場合に、その手話がどの程度読みとれているかを把握する必要があると考えられる。そこで、手話者の行う手話がどれくらい読みとれたかを調べる「手話の可読性」実験を行った。
実験時の各照度における視力と可読率の関係を図1に示す。視力0.5付近までは可読率は急激に上昇するが、その後緩やかな上昇カーブとなることが図から読みとれる。標準偏差は低視力で大きく可読率のばらつきが大きくなっている。種々の明るさで手話を見る場合、印刷された文章を読む時と同様に手話の可読率もその時の視力と相関が高いことがわかった。
図2は実験時の各照度での視力を大きく0.8以上と未満の2つに分けて、鉛直面照度毎にそれぞれの平均を求め、鉛直面照度と可読率および評価値との関係を示したものである。可読率では視力0.8以上では照度変化に関わらずほぼ一定の値をとるが、視力0.8未満では照度が高くなるにつれ可読率も高くなっている。一方評価値は、視力の影響が見られない。手話者位置での鉛直面照度以外の条件は同じであれば、手話を読みとる能力である可読率はその時の視力に左右されるのに対し、手話の見やすさの判断は視力よりもその時の明るさに大きく影響されるのではないかと考えられる。


図1 視力と可読率

図2 視力で分けた可読率と見やすさ評価