知っている人間にだけ解かるような環境調和型の音サインを作ることができだろうか。例えば通路の分岐点など、音で空間の違いが認識できれば、それは視覚障害者にとって空間のガイドとなり得る。これを、音の回折効果というありふれた現象を使って実現することを試みる(図1)。
基礎的検討のための音源としてバンドノイズ、HP500(500Hz以上)、HP1000(1000Hz以上)、HP2000(2000Hz以上)、BP1000(500~1000Hz)、BP2000(500~2000Hz)の5種類を作成し、40,50,60dBの3水準の音圧レベルで歩行実験を行った。背景音は40dB、50dBの2種類のピンクノイズとした。音が変わったと申告した点が図2,3に示されている。BP2000は半分以上の人が回折点に入る前に停止していることがわかる。それに対してHP2000は、どの条件でも中央値がプラスの値となり、試験音が大きい条件のときでも、-0.5mより手前で停止する被験者はいなかった。
高周波数域を含まない音は、回折地点前後の音圧レベルの差が小さく、被験者は音の違いを認識しにくい。逆に2000Hz以上の周波数を含む音は回折地点前後で音圧レベル差が生じやすい。特にHP2000はBGNの影響も受けにくいことが示された。
図1 実験モデル
図2 停止位置範囲 HP2000(縦線は中央値)
図3 停止位置範囲 BP2000(縦線は中央値)