2003年にサンディエゴで開催されたCIE(国際照明委員会)の国際会議に参加した。その時に、San Diego Center for the Blind(サンディエゴ視覚障害者センター)を訪問した。それまで、数年かけて北欧の障害者対応のサイン・デザインを研究して見て回った後であったので、北欧のデザインとの違いや共通点など、多くの部分で感銘を受けた。
とりわけ、ここで紹介したいのは、San Diego Center for the Blind(サンディエゴ視覚障害者センター)で見つけたトイレのサインである。
このトイレのサインは、実に単純な、○と△の二つの図形で構成されている。
点字やレリーフ文字のような細かな凹凸ではなく、△・○の形状そのものが視覚にも触覚にも刺激として働きかけ、分かりやすい。
左の写真の○形は、周囲にさっと触れるだけでカーブが分かる。細部の見分けなど必要ない。これは女性のトイレを表す。それに対して、真ん中の写真は、△と○が重ねられている。右の写真を見ると、ドアに貼ってある△は、男性用トイレを表していることに気づく。よって、真ん中の△と○を重ねたサインは、男女共用という意味である。スタッフが使うトイレらしい。
△と○、こんなに明確な形だと、じっくり触れなくても、じっと眺めなくても、その形状は一目瞭然。トイレが男性用なのか女性用なのかが分かる。ADA(Americans with Disabilities Act:障害を持つアメリカ人法)でも推奨されているこのトイレサインに、それまではあまり気づいていなかったかもしれないが、以後、あちこちで遭遇することになった。
写真(左)女性用トイレを表すサイン
写真(中央)男女共用トイレを表すサイン
写真(右)ドアの△は男性用トイレを表すサイン