日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

<”におい”の視点から>
 五感を活用する上では、嗅覚を利用した”におい”という視点も考えられます。街中で飲食店の前を通ると良いにおいがすることがしばしばあります。まちかどのラーメン屋さんやたこ焼き屋さんなどがあり、これが視覚障がい者にとって“におい”のサインになることもあります。以上のようなことから、五感を活用する上では”におい”も重要なサイン環境となる可能性が高いと思います。ここでは、レストランのメニューについて、においサインの可能性について提案例を示します。

”におい”つきメニューカードの提案事例
 子どもからお年寄りなど多様な人が利用する外食産業においても、今後はユニバーサルデザインの視点が必要です。特に五感を使って楽しむことができるレストランチェーン等は、サイン環境をはじめ、客席のテーブル周り、トイレなどに関してもユニバーサルデザインの視点から考慮しなければなりません。今回はレストランのメニューに着目し、実際の店舗において調査を行った上の提案です。
 本研究室では、大手レストランチェーンの4社の店舗のメニューやテーブル周りを調査したところ(今回は詳細には触れませんが、実際にはレストランのテーブル周りの寸法等についても調査しています)、4社中3社がラミネートを使用した冊子タイプのメニューをメインに扱っていました。メインメニューに加え、季節限定や新商品、おすすめをピックアップしたメニューも置いている店舗もありました。1社のみ、点字を使用したメニューも取り扱っていました。どの店舗のメニューも、写真を参考に選ぶため、情報を得る際にはほとんど視覚から得るものとなっています。以上のように、従来のメニューは商品写真を参考に選ぶことから、“におい”も参考にメニューを選んでもらう提案をしました。
 今回提案する“におい”つきメニューカード(写真-1)は、においも参考にメニュー選んでもらいます。商品を選ぶ際のツールとして、においの情報は、本能を直接刺激するという特徴を持っているからです。“におい”つきメニューカードの詳細は図-1に示します。
 最近は、香り印刷を提供している企業も出始めており、香りつき名刺など、紙媒体に香りをつけて楽しめる方法もあることから、においを使ったサインや有効活用することで五感を十分に活用できる可能性が十分にあります。


写真1 においつきメニューカード