日本建築学会
環境設計運営委員会
環境バリアフリー小委員会
Subcommittee of Environmental Barriers-free

大講義室で手話の見やすさ評価を実施した。実験条件は、手話者の胸の位置での鉛直面照度6段階(4~1000lx)、服の色 1 種(紺)、背景の色2種(白、黒)、手話者(手話通訳士)と被験者の距離4条件(4.1~14.1m)、被験者(聴覚障害者)18名である。評価実験で手話が「見えにくい」、「どちらかというと(やや)見えにくい」を評価した被験者には、その時、手話者のどの体の部分が見えにくかったかを回答させた。
結果を纏めると以下の通りである。
(1)
手話者の位置での鉛直面照度が 333lx 以上の場合、何れの座席位置(但し、視距離が最大 14.1m)でも手話の見やすさ評価は「見やすい」かそれに近い状況であるが、12.3lx 以下の低い照度では例え視距離が短く(4.1m)ても「見やすい」状態にはならないことがわかった。
(2)
手話の見やすさは、手話者位置での鉛直面照度が低照度ほど手話を見る距離の影響を受けることがわかった。
(3)
手話者の位置での鉛直面照度が 100lx を境にそれ以上になると座席位置(視距離)毎に結んだそれぞれの線の勾配はやや緩やかになる傾向があり、視距離が短い程その傾向が大きいことがわかった。
(4)
手話の見えにくい箇所は、どの座席位置でも、「顔の表情」、「口の動き」が「手・指の形」、「手・腕の動き」より多かった。“人の顔”の表情は手の形や動きの見え方以上に、手話の見やすさにとって重要な役割をもっているものと思われる。